『ロマンティックに生きようと決めた理由』(アノニマ・スタジオ)の名付け親である岩崎有加さんにお話を伺いました。おもしろかったですよー。相手の目をまっすぐに見て話す人です。この人にはウソつけないな、と思うから自然と口数が少なくなってしまいました。ということは、けっこう日常軽はずみにウソついてるんですね。
ではどうぞ。
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あのタイトルはね、理由があるんですよ。もう10年以上前なんですけど、当時仲良くしてた人がいて、すごい年上の、おじさんですよ。いろんなことを教えてくれた人で、その人と海にいたんですよ。それでね、そのうち波打ち際で石を投げはじめてね、その人が海に向かって言ったんですよ。「ロマンティックに生きていきてぇんだよー!」って。それを後ろで聞いててね、かっこいいー、とか思って、あたしもー、なんて思って、便乗しようと。(笑)その日ノートに書いたんですよ。そこから来てるんです。
ロマンティックってね、女の子が(かわいい声で)「ロマンティックなお洋服が好きなんですぅ」っていうふりふりふわふわのロマンティックじゃなくて、自分のいうロマンティックっていうのは、おとぎ話や神話なんかにでてくる主人公が、難関にむかって勇気とか知恵を駆使して必死になって立ち向かってくみたいな、そういう話、あるじゃないですか。葛藤するプロセスを抜けて、からの~みたいな。そんなイメージが強いかなあ。まあ日常でもね、あるじゃないですか。似たようなことはいっぱい。それが近いですかね。
あのなかに書いた文章のなかで、今読んでみてちがうと思うところは「後悔なんてまっぴら」っていうところだけ。ちがうっていうかね、あの頃は「!」マークをふたつくらいくっつけたい気分でしたけどね。「まっぴら」って言いたかったんでしょうね。今はね、もちろん後悔はしたくないけど、でもどうしようもなく後悔することだってあるよな、って思います。しみじみ思います。
After words
・書いてしまったからという理由で意地になってずっとロマンティックに生きてやるとか、そういうことはないんですが。できるなら、それにこしたことはないなあと、わりとよく思ってます。いまでも。(岩崎)
・今回、お話しするのにあたって『ロマンティックに生きようときめた理由』を再読しました。読んでいて唯一気になったというか、引っ掛かったのが「後悔なんてまっぴら」という一文でした。だから「後悔することだってあるよな、って思います。」と岩崎さんが言うのを聞いて、なんだかほっとしたのでした。(村椿)
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沼津でね、毎年お正月に寒中水泳大会があるんですよ。元旦に寒いなか海で泳ぐんです。幼なじみの子が10数年来、ずっとつづけてて。で、わたしは泳ぎたくはないけど、参加はしたい。それで、どうやって参加しようかなあ、って考えて、あるとき炊き出しをやろうと思いついて。
大西進(大西進についてはのちに詳しく)とふたりでおにぎりとか豚汁とかからあげとか持っていって勝手にブースを作ったんです。別にどこに連絡するわけでもなくほんとうに勝手にはじめたんで、泳いで海から上がってきた方達も「あれはなんだ?」って感じで寄ってきてくれなくて、だけど大西進がそういうトークが上手くて「よかったらねー食べてってくださーい。もうねー残っちゃったってね、しょうがないんでー」みたいにして呼び込んだら5分くらいでぜんぶはけちゃったんで、次の年からはまた量を増やして、メニューとか変えて。今年で6回くらいになるんですけど200人前とかなってちゃって、やってるうちに友達が手伝ってくれるようになって、「手伝えないからお金だけ出させて」ってお金を包んでくれる子もいて。だんだん大所帯になってってます。もともとのお汁粉をふるまう方々がいて。その方達は地元の水泳連盟の関係で。先輩ですからね。ちゃんと挨拶に行きますよ。はじまるまえに「先輩、今年もよろしくお願いしますっ」って。そこはね、ちゃんとしないと。
でもね、「元旦から人のために善いことをしてると徳が積まれていいわよね」なんて言われると、ちょっとちがうんだよなあーうまく言えないけど。自分がおもしろくて勝手にやってるだけなんですよ。水泳大会に参加したいけど泳ぎたくはない、っていう、ただそれだけなんです。
After words
・みんなが喜んでくれることはとてもうれしいけれどもそれが一番の理由じゃないっていうか。大晦日から元旦の朝方にかけて疲れ果てて、きれぎれ状態で大きい寸胴鍋の豚汁かきまわしながら、『なにやってんだ?自分ら』という問いかけを毎年しています。そこが、醍醐味といえばそういうことなのかもしれません。
『可笑しい』んです。その必死さが。(岩崎)
・泳ぎたくはないけど参加はしたい。それも、自分がおもしろいと思えるかたちで。そこで何ができるだろうと考えて実行するところまでいかないですよ、なかなか。(村椿)
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誰にも頼まれてないのにやるっていうのがむかしから多くて、高校の頃も生徒会の副会長やって、なんかおもしろいことやんなきゃって。それは推薦で入った高校だったんですけど進学校で、最初のテストで成績の順位が貼り出されたときに、「これはもう勉強じゃとても太刀打ちできない」って思って、だけどそれでも出身の中学の推薦枠が減ったら困るから、なんとかして「あの中学から岩崎をとってよかった」って思われるように、って。生徒会活動は全然たいしたことやってなかったですけど、ものすごい物まねの練習とかやって、みんなに見せてた。へんな責任感が強いんですよね。「人に迷惑かけちゃいけない」って小さい頃から言われすぎたのかな。逆に迷惑ですけどね。今考えると、おもしろいことやったって、大学進学率のばせなきゃ、高校的にはほとんど意味ないですけどね。その当時はなんだかそれしかない!!って決めてかかってましたね。自分の居場所探しだったとも思いますし。
誰にも頼まれてないのにやる、ってね、おもしろいんですよ。でも、ほんとうに「おもしろい」だけかっていったら、それもちがうんじゃないかと。みんなにサービス精神をふりまいて人気者になりたいんじゃないかって言われたら、そういう部分もあるでしょうね。「かまわれたがり」なんで。それをどう表現するかですよね。ただ「人気者になりたかったんです!」っていうのもおもしろくない。「ほんとは人気者になりたかったんでしょ」って聞かれて、(ちょっとかっこいい声で)「うーん・・・(真剣に考えてる顔で)、ちがうと思う」っていうのもね、おもしろくない。そしてかっこ悪い。っていうかそれは嘘っぽい。他人にこう思われたいみたいなことはあるにしても、本来の自分の姿とあまりにもかけはなれすぎちゃってますしね。
例えばね、バンドやってる人が「どうしてバンドはじめたんですか」って聞かれて「女の子にモテたかったからです」って最初に言った人って誰だったんだろうなって思うんです。その前は(かっこいい声で)「物心ついた頃には目の前に楽器があってぇー」とかそういうこと言ってたんでしょ。←意地悪目線すぎですかね?それを最初に「モテたかったんで」って言った人はかっこいいと思うんですよ。壮快ですよ、そんなことあえて自分からいいだすなんて、勇気いりますよ。今はもうね、そういうださカッコわるいことをあえて言うみたいなこと多いから、新しいところを開拓しないといけないですよね。本気だして。だからね、どう表現するかですよね。いいかたですよね。あとは勇気。
After words
・自分という現実を受け入れるには、かなり勇気いりますしね。自分はそのあたりはだいぶしんどい時期が続いてたんで、そこは思い出すといろいろね、いまだに苦笑いは残ってます。(岩崎)
・わたしは思いっきりかっこいい声で「そんなことないと思う」って言っちゃってた方だったので、ダサかった自分の姿が脳裏によみがえってきてへんな汗をかきそうでした。本気と勇気。ほんとですよねえ。
大西進のこと。
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大西進は最初、店に来たんです。「キモチ悪いヤツが来たなぁ」って思ってたんです。←すいません。よくいえば「中性的」っていうのなんですけど。狭い店なのにいつまでもうろうろして、最後にガラスの瓶にさした根っこの生えちゃった雲竜柳を指さして「あのぅ、これがほしいんです」っていうから、もともと売り物じゃなかったんで、これあげるから早く帰りな、って感じで。それからもよく会ったんですよ。ほんとになんだかなあって思ってて、こいつ、ほんとはこんなヤツじゃないんだろうなって思ってました。不思議ちゃんを装ってるんだろうなって。それは直感で。っていうか経験かなあ。自分もそういう時期があったからわかったんです。で、偶然でもこれだけ何度も会うってことは、神様が何かあたしに気がついてほしいことがあるんじゃないかなと思って。
大西進が働いてた喫茶店のフリーペーパーのなかに、大西は「スッスーのつぶやき」とかいうひとことコーナーを担当してて、「彼女のまえでは素直になれる僕」みたいなことを書いてて、それを見てあたしは「これはなんだ!!」って言ったんです。「『彼女のまえでは』じゃねーよ。誰のまえでも素直になれよ」って。その言い方、いま思うと、ひどいすね。そしたら大西はちょっと泣いたんです。心で。(大西進はこのあと何度か泣かされ、のちに「もう大西進を泣かせてはいけない」という作品になる)。
After words
・友達はいいな」と思うと、ふいに泣いたりします。ふられて飲み屋のトイレでゲロまみれになりながら篭城してたとき、アスファルトにダイブして前歯をおって血だらけになったとき、なんでもないときも、調子くれてるときも、なんやかんやでいつも世話になっているのは友達です。(大西含む)(岩崎)
・この場に「もう大西進を泣かせてはいけない」をお借りしようかとも思ったのですが、ご本人の声と間で聞くのが最高なので、やめました。わたしも「大西進」だった時期があるので(大西進さん、すみません。お会いしたこともないのに。。。)その頃に岩﨑さんみたいなお姉さんが現れたらチビッちゃうぐらいビビって逃げちゃうだろうな。「誰の前でも素直になれよ」って、ものすごくぐっときちゃいました。わたしも心で泣きました。(村椿)
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「ほんとのとこ」を知りたいんですよ。自分の「ほんとのとこ」も知りたいし、人とも「ほんとのとこ」で付き合いたい。まえに年上の女の人に「ほんとのとこなんてないんだよ!」、っていわれて泣いたことがあります。「えー、絶対あるよー」と思ったら泣けてきちゃって。その人から「どうして泣いてるのー。そっか、泣きたいときは泣きたいんだよね」とかいわれて「それもちがうー」ってまた泣けてきて、なんかぜんぶちがうー、って。その女の人のことどうとも思ってない人だったらよかったんだけど、好きだったからよけい悲しくて。伝わらなさかげんが、もう自分に不甲斐なくて。
自分のことはいつも疑ってかかってますよ。「おまえ、ほんとにそうか?」って。自分がいて、自分を観察している自分がいて、どっちも自分で、ふたつの自分との関係性っていうかな、距離には変化もあって。そんな感じです。そういうの客観性っていうんですか? でも客観性がなかったら作ったものも作品にならないですよね。
After words
・ある時期、「リアル」って言葉に憧れて、その言葉を自分のものにしようとやたら考え込んでましたけど、まだはっきりとわからない。「ほんとのとこ」っていうのも近い意味なんでしょうけど手のひらにのせて、「はい、これです」ってものでもないですしね。(岩崎)
・「先輩も(先輩、と岩﨑さんはわたしのことを呼びます。なぜか)そうじゃないんですか、自分のこと、疑ったりしませんか」と聞かれ、疑うっていうのはちょっとわからないなあ、と思いながら、でも常に「信じたい」と思っているので、それって裏を返せば「疑っている」ということなのかもしれないと思いました。岩﨑さんももしかしたら「信じたい」人で、信じたいからそこを補強するために一歩踏み込んで、意識的に、積極的に疑っているんじゃないかと思ったのですが、どうなんでしょうね。(村椿)
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「みんなが好きな言葉」ってあるんですよ。「お金になる言葉」「人気ある言葉』って言い換えてもいい。それね、あなたそうやって使ってるけどほんとにわかって、腑に落ちて言ってるか?、って思います。あれって軽い洗脳ですよ。最近は「こつこつていねいに」とかそういう言葉をわりとひんぱんにつかう人が多いじゃないですか。自分はその言葉はわからないっていうか、腑に落ちてなくて、「しつこく」っていうと自分はわかるんです。「しつこくやる」とかね。「しつこく」だったら実感をもって言える。人気でなさそうですねー、この言葉。
去年、卵巣の病気をして入院して手術して、術後1ヶ月くらい店にも立てなかったんですよ。そのときにも「体大事にしなくちゃねー」とか言われたんですけど、あれもよく聞く言葉です。いや、健康はだいじですよ。ほんとに。あたしのためにいってくれてるのもわかってるんですよ。でもね、自分は入院して寝てたときに思ったのは「リミットってあるんだなあ」ってことなんです。なんだって、いつまでもやってられるわけじゃない。だったら今やれることをもっとやらなくちゃいけない。もっと走らなくちゃいけないって、そう思ったんです。
After words
・ちなみに、マラソン大会では、スタートダッシュでだんだん抜かされていくタイプ。長距離、苦手でした。でもズル休みしたことはないです。(岩崎)
・岩崎さんはけして「人気のある言葉を使っちゃいけない」と言ってるわけじゃないんです。「ほんとうにわかって、自分のものとして使ってる?」ということなんです。ここでも「疑え」と言ってるわけですね。わたしは「地味にやる」ってよく言いますね。「しつこく」っていうのは課題です。「もっとしつこくならなくちゃいけない」と思って粘りきれず息切れ。わたしはマラソン大会思いっきりずる休みしてました!(村椿)
ドラゴンボールのテーマ曲って知ってます?
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ドラゴンボールのテーマ曲って知ってます? 「この世はでっかい宝島、そうさ、いまこそアドベンチャー」っていう歌詞があるんですよ。もうね、ほんとですよ。世界はでっかい宝島なんですよ。たぶん自分は仕事(花屋店主)してないと、なんにもしないんですよ。風呂にも入らず顔も洗わずっていうふうになるんですよ。店があるからお客さんが来てやり取りして。花をいけて、水揚げして、そうじして、ゴミ出して、打ち合わせいって。不都合なこととかやっかいなこともいっぱいありますよ。仕事ですからね。お金いただいてますしね。でもそれがいやだからって閉じこもってたらもったいないんですよ。「世界はでっかい宝島」なんだから。
物事って、8割がたうまくいかないですよ。都合良くいかないっていうか。個展とかワークショップなんかやってると、たまに(かわいい声で)「なんかいいですよねぇ、アーティストってぇ、わたし全然センスないんですよおー」とかいわれてもね、センスっていう言葉もあんまり自分にフィット感ないんですけど。あれはどういったことなんですかね?話しそれましたけど、でもって、創作って90パーセント以上地味ですよね。がんじがらめの夜ですよ。あたまクルクルしてますから。自分になんだかなあ?ですよ。もてあましちゃって。でも、「世界はでっかい宝島」だから。冒険しにいくしかないんですよ。
After words
・「創作」するということも、だれにもたのまれてないことで、ほんとに自分きっかけで、やりたくてやってんのに、ああだのこうだの言い散らかしますからね。まったく自分勝手なもんです(笑)続けていけばなんか見えるんじゃないかって、知りたい「欲」で、やっていってるんだと思います。(岩崎)
・でも岩崎さんには底知れないサービス精神がありますからね。下敷きになっているのは「自分勝手」でも、ちゃんとその上にサービス精神をのっけて「はいどうぞ」と差し出そうとしてくれるわけです。だいたい、自分勝手だけであんなにライブで人を笑わせられませんからね。
お話しできて、ほんとうに楽しかったです。この話、お客さん入れてやればよかった、と思ったくらい。このあとマーガレットダイアリーに文章をよせてくれます。楽しみにしていてくださいね、とハードルを上げておきますよ、岩崎さん。(村椿)
岩崎有加
1972年生まれ、静岡県沼津市在住。職業フローリスト他。
はじめて文章を発表したのは、1999年の『12water stories magazine』から。
その後は小冊子「fu-chi」の連載や『ロマンティックに生きようと決めた理由』(共著)、
『ボタンとリボン』(共著)など。
その他、言葉をつかったインスタレーション、グループ展等いろいろ。
常に、できる限りの表現活動をこころがけている。