special

思いつきと巡り合わせで生まれる「小さくて特別なもの」。

Biweekly poet vol.6

TAMBOURIN GALLERYにて行われた朗読会から。


Biweekly poet vol.6 星裕二 6月24日
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僕が口を開く理由
 
突然なにを、と思うかもしれないけど
僕が考えていることを
君に理解してもらおうとは思わない
というよりも
僕の考えていることが君にわかるはずはないと
どこかで思っている
僕がこの乗り物のどこが好きで
このバイクのどこにちょっとの不満があるか
君にわかるだろうか
タンクの形がスマートで
全体がスリムなんだけど
ぼてっとして、どことなくやぼったい
 
そんなことわかるだろうかと思いながら
それでも僕が
君に僕の考えていることを話すのはなんでだろう
 
君がこの靴とあっちの靴を比べて
なんであっちの靴がいいと思うかなんて
僕にはわかりっこないと思う
でも君は靴を2つ並べながら
あの紐がかわいいとか
ここの絞りがすっきりしててかわいいとか
とにかく思いついたそばから靴を褒めたたえる
そうまでして、君が僕に君の思うことを話すのはなんでだろう
 
僕が今日あの人に憤りを感じたのはなんでだったか
たぶん君はちゃんと理解してくれていないと思う
いや、実を言うと僕だってきっと理解していない
あんちくしょうと思って口にするそばから
出てくる言葉は自分をすりぬけていくようで
言葉がぴったりついてきてくれるようなことは
あんまりない
でも、とにかく
腹立ったことを
おうおうと威勢良く
思い出しながら
ぼろぼろとしゃべっていくうち
また違う自分がやってくる
 
例えば
とにかく興奮して頭がくるくるしながら
見終わった映画の感想を
あのシーン、このシーンと言いながら
整理のつかない頭でしゃべりだす
しゃべりだすうちに
あれ、こうゆうことじゃなかった
となんだか意気消沈していく
言葉に出しちゃったことで
なにかが終わっていく
言葉から始まっていくと思っていたのに
言葉から終わっていく
ああ、なんだ
なにもこうしてしゃべらなくとも
そのまま胸の中においといて
適当にほうっておいて
もうみんながその映画のことなんか忘れたころに
自分の思い出したシーンのことをしゃべりだせばよかったのかと
 
君がどうして今不機嫌なのかは僕にはわからない
僕にそれがわからなくともこうして君は現に不機嫌で
その矛先の一つは僕に向けられている
なにをそんなに怒ってんの
なんて言葉でその不機嫌に立ち向かおうなんて
ちょっと野暮な話で
こうなったらしばらく黙ってやり過ごすしかない
そうこうしてしばらくするうちに
日が暮れて、お腹がなって
お腹減ったね、夕飯どうする
うん、夕飯どうするか
と出てきた言葉に救われて
ゆっくりと夜が更けていく
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2010.06.28 07:28