special

思いつきと巡り合わせで生まれる「小さくて特別なもの」。

2011年9月

daily poet  村椿菜文

110921季節のマーチ

肌寒い朝
目覚める前の一瞬
毛布を引き寄せながらおでんの夢を見る
おでん
とりつくね鍋
モツ煮込み
牛スジの煮込み
ブリ大根
そんなもの達がこれから列をなしてやってくる
だから何も恐れることはないのだと
気持ちを強く明るくする
夏は終わった
今度こそほんとうに終わった






2011.09.30 07:43

daily poet  伊東和佳奈

「夕暮れのセレモニー」

太陽がその姿を赤く染める準備をする頃、
綿菓子のように白い雲たちが
その姿をそっと隠すように包み込んでいく

それでも覆いきれない薄紅色の光のベールが
放射状にゆっくりと広がって
幾つもの光の糸が赤い絨毯のようにすぅーっと降りてくる

雲に顔を覆った太陽は
黙っていても幸せが溢れ出てくる花嫁みたいだ

いつもはあまり感情を表に出さない
凜とした山たちも
光のベールがかかっている間は
表情を緩めて優しく微笑んでいる

やがて霧のように細やかな光の粒子が
宙にキラキラと放られると
祝福とともに夕暮れのセレモニーは終わり
辺り一面にネイビーブルーのカーテンがひかれる

華やかで無邪気だった太陽が
しっとりと落ち着いた表情をたたえた月の姿となって
ゆっくりと雲の合間から姿をあらわした






2011.09.26 17:11

daily poet  伊東和佳奈

「知っているということ」

そのなめらかさを水が知ることはない
その眩しさを太陽が知ることはない
そのあたたかさを灯火が知ることはない
その尊さを命が知ることはない

そのなめらかを君は知っている
その眩しさを君は知っている
そのあたたかさを君は知っている
その尊さを君は知っている

知っているということは
感じているということ

知っているということは
繋がっているということ

知っているということは
照らし出すということ

知っているということは
自由になるということ






2011.09.26 17:10

daily poet  伊東和佳奈

「寄り道」

ちょっとさみしくなると寄り道をする

ふらふらしてるうちに日が暮れて
まっすぐ帰ればいいのに
曲がり角があるとつい曲がってしまう

強がって、上を向いてみるけれど
夕空の果てしなさに途方にくれて

誰かここから連れ去ってくれたらいいと
心を閉じたまま、足をとめる

ぽつぽつと
雨が地面を染めるたびに

ぽつぽつと
空いた心の隙間

中途半端な好奇心と道端の青い花
だだっ広いグレー色の空と
知っているようで知らない通り

居場所が見つからないように感じるのは
そこに居る自分を見つけようとしないから

現実と幻想の狭間を往き来する
さみしがりやの
寄り道






2011.09.26 17:09

daily poet  丹保昌子

突然湧き上がった歌声。手で拍子をつけて、音に合わせてゆるく体を揺らめかす彼女らから、目が離せなくなる。高くも太くて安定した声色は、私には備わっていないものだった。歌の源は祈りという行為から生まれた、そんな話を思い出す。それに相応しく、歌は大空へ立ちのぼり、大地へしみ込んでゆく。大気に祈りが溶けてゆく。
小さな娘を連れて、トランクをガラガラ引っ張って故郷の道を歩く。家々からは夕餉の匂いが漂う。小さな魚屋の前を通ると、店主から声をかけられた。勿論知り合いでも何でもない。「里帰りかい?早く旦那のいる家に戻ってやんな」。「そうします」笑って返事してハタと気づく。家出と間違われた?ただの帰省なんだけどな。歩きながら堪え切れずクスクスすると、娘が不思議そうな顔で見上げた。
 





2011.09.26 07:01

daily poet  丹保昌子

植物が異なれば、葉擦れの音も違うと知る。熱帯の緑の葉は厚く、水分をたっぷり含むゆえ。裏庭でバタバタと大きな音に驚いて振り仰ぐと、そこにはタビビトノキが風に煽られ幅広の葉をはためかせていた。幹に多くの水を溜め、旅する人の喉の渇きを癒すときく。本当かどうかまだ試したことはない。あまりに幹が大きくて、切るのに臆してしまう。





2011.09.24 08:19

daily poet  丹保昌子

密林の国の空は広い。雲が多い。電線がない。飛行機もヘリコプターも横切らない。空高く飛ぶのは鳥と蝙蝠。だから、たまに飛行機の轟音が聞こえると吃驚する。静かな空には、風だけが通るのが常。とても手の届かない高い木の葉を揺らしては、人間の領域でないことを示す。




2011.09.23 06:56

daily poet  丹保昌子

密林の国の雨季は半年。間に小乾季と呼ぶ、雨が止まる時期が入る。雲が空を覆うと涼しく、陽が照れば途端に暑くなる。その温度差があまりに大きくて、体がついてゆかない。だからこの国の人びとはよく休む。それに倣って異国人の私も無理せず体をいたわる。さぼっているのではないけれど、仕事が進まないのは確か。ゆっくり急がないのがこの国の流儀。



2011.09.22 08:29

daily poet  畑尾和美

「時間はやさしい」
秋風とともに
染み入る言葉
2011.09.09 07:57

daily poet  畑尾和美

もう
ひと匙
心の
ひと匙を
忘れないように




2011.09.08 07:41