special

思いつきと巡り合わせで生まれる「小さくて特別なもの」。

2011年10月

daily poet  伊東和佳奈

「プラスチックのうつわ」


可愛らしいプラスチックのうつわを買った
うつわは外側が若い新芽みたいな黄緑色で
中はたまごの殻みたいな白い色をしていた
買ったその夜
意気揚々とカレーをつくって
そのうつわで食べた
一晩だけのパーティーのように
あまりに軽くて色鮮やかで
なんだか可笑しく愉快になってきて
二杯もおかわりした
食べ終えてフワフワした心のまま
洗剤つけて洗ったら
山吹色のシミがしっかりついていた
スポンジでこする度に
パーティーの余韻は消えていったけど
カレー色はここぞとばかりにうつわに居座った
その後、シミを抱えたまま
カレー以外のものをそのうつわで食べては何度も洗った
そのうち使う回数も減ってきて
久しぶりに食器棚から出すと
すっかりカレー色はいなくなっていて
うつわの中はたまごの殻のような白になっていた
そんなもんだよな、と
妙に納得して何事もなかったかのように
カレーをよそった

2011.10.04 08:03

daily poet  伊東和佳奈

子どもみたいに
目の前の面白いと思うものに
すぐ夢中になるのに
すこし時間が経つと周りが気になって
顔をあげてしまう

子どもみたいに
目先の石ころに気を止めることなく
遠くの遊園地にある赤い乗り物を目指して
突っ走て行くのに
誰もついてこないと心細くなって
もう少しの所で立ち止まってしまう

子どもみたいに
人参もネギも嫌いで
一かけらも食べないくせに
人に会う時は大抵笑顔でいたりする

子どもみたいに
楽しいときは兎みたいにピョンピョン飛び跳ねて
悲しいときは何日も思い出して泣くのに
人前では何かあっても平気なふりをする

君は子どもになりきれない
大人みたいな子どもで

大人になりきれない
子どもみたい大人だね






2011.10.03 07:01

daily poet  伊東和佳奈

「あたたかな痕跡」

毎朝、使い捨てのコンタクトレンズが
ソファーの背もたれの所や
ダイニングテーブルの上
ベッドの淵やチェストの上に
しわしわになりながら
ちょこんと置いてある

君が夜遅くに帰ってきて
家の中で過ごしたぬくもりが

しゅーんと小さく丸まりながら
温かな痕跡となって
今朝も窓辺に残されている






2011.10.01 08:12