special

思いつきと巡り合わせで生まれる「小さくて特別なもの」。

daily poet  20120508

囲いの向こう

お名前はなんていうの
お母さんはどこにいるの
ごはん食べたの
ねえ、聞いてるの
さっきからアヒルに向かって話しかけてる
三歳の女の子には
アヒルと自分の間にある檻が見えていない








2012.05.08 07:59

daily poet  20120507


枕は低いのより少し高めなのが好きで
カバーは生成りの無地と決まっていて
同じくらいの高さの枕をふたつ並べて
眠っている間に行ったり来たりする
たいていは朝起きると
ふたつの枕の間に顔がうずまっていて
一晩じゅう守られていたような安心感で
目覚めることができる




2012.05.07 08:49

daily poet  20120502

口笛散歩

手のひらに口笛をのせて顔を洗うと
水と一緒に口笛がバシャバシャと顔にはりついて
いつまでたってもほっぺの辺りで朝の口笛が鳴っているから
こんにちはって挨拶するときも愉快な口笛の伴奏がつく
怒られて下を向いているときも
まつげの先にぶら下がった今朝の口笛を呼び出して元気になる
台所の鼻歌にも口笛はのっかって
山の小道の散歩にもついてきて
雨音に重なって
1日じゅう愉快でいられる
くちびるの先にのせて
1日の終わりにソファの隣に座っている人にも届ける





2012.05.02 07:38

daily poet  20120501

朝の雨

朝の雨っていう歌があって
そっとはじまって
静かに歌って
そっと終わる歌なんだけど
今日の朝の雨は
あの歌みたいな雨だ




2012.05.01 07:14

daily poet  20120428

ビューティフルモーニング

昨日の天気予報で今日は夏みたいな晴れだって聞いていたから
朝起きたら眩しいくらいの太陽におはようって言うもんだと思ってたけど
曇ってた
そんなことでがっかりするくらいなら天気予報なんて見なけりゃいい
明日の天気は明日になったらわかるんだ
明日の天気がどんな天気でも
明日の自分がなんとかするからそれでいいんだ
そう思って
今朝も機嫌を直そう
曇り空の下
若葉をびっしり茂らせたモミジの木が風に揺れていて
うちの庭でいちばん高い桑の木も
平屋の家の屋根を守るように空に近いところで揺れていて
ナスタチウムのオレンジの花も揺れていて
なかなかのビューティフルモーニングだ



2012.04.28 08:23

daily poet  20120427

息子の自転車

昨日、息子の自転車を粗大ゴミに出した
電話で予約しておいたので
朝のうちに門の前に置いておいたら
お昼前にはなくなっていた
物音にも話し声にも気がつかなくて
何度目かに縁側に立ったときに
さっきまであった自転車がなかった
息子の体には小さくなってしまった自転車
誰も乗らずに庭で雨ざらしになっていたから
なくなったら清々するだろうと思っていたら
ぜんぜんそうではなくて
買ってやったときの息子のはしゃぎぶりや
得意げに庭をぐるぐる乗り回していたことや
ちょっと頑張って買ったので
お金を払うときの「えいやっ!」という自分の気持ちや
はしゃぐ息子の姿を見て自分までもが嬉しく
誇らしい気持ちになったことを思い出して
感傷的になってしまった
過ぎた時間は戻らないって、あなた知っていましたか?
わたしはどうやら、知っているつもりになっていただけで
ほんとうにはわかっていなかったみたいです
そうしてこういうときになって思い知らされて
びっくりして
忘れて
またびっくりして
そんなことを繰り返しているなんて
せっせと食べるものを隠しては隠し場所を忘れてしまうリスを
なんて他愛のない、可憐な生き物だろうと笑っているけれど
自分もそんなに変わりはしないのだと
思った日でした
自転車はなくなってしまったけれど
思い出は残っている
いつもは忘れていたのに
自転車がなくなったことで思い出を掘り当てた
笑顔や膝小僧につくった擦り傷
ほんとうに
リスと変わらない
自転車がなくなってひと晩たって
やっぱり庭は少しスッキリと広くなって
清々した




2012.04.27 07:21

daily poet  20120426

夜の町の隅っこで

夜の町の隅っこで
行くところもなく輪になって座っていた
夜が明けるまで
帰るところがあるやつもないやつも
離れがたくて
さっきから同じ話ばかりなのに話し足りなくて
そうしたらひとりの女の子が急に立ち上がって
ひとりの男の子がかぶっていた帽子をひゅいっと取ってかぶって
輪の真ん中で踊りはじめた
頭に載せた帽子に片手を添えて
スカートの裾を揺らしてくるりとターンした
彼女がそのとき頭の中で鳴らしていた音楽は
みんなの耳に届いたわけじゃないけど
それぞれが
きっとこんな音楽
と信じることができたからそれでじゅうぶんで
不意に帽子を取られた男の子はわかりやすく恋に落ちて
朝がくるまでぼんやりしてた
そんな時間を一緒に過ごしたあの子たちは
わたしの頭の中でちっとも年をとらずに
今でも町の隅っこで夜明けを待っている
夜が明けたら何かが変わると毎晩思って
だけど夜が明けたらただ眠いだけで
眠るためにじゃあねと別れてそれぞれの寝床に潜り込んだんだ
そんな夜がたくさんあったってことが
懐かしいなんていう言葉以上に
今の自分を支ることがある
あの子たちもどこかで
そんなふうに思ったりしてるんだろうか



2012.04.26 08:31

daily poet  20120425

誰かに

誰かに肩を叩かれたような気がして振り向くと
頭の上から遅咲きの八重桜の花びらが降ってきて
裏の家の庭に八重桜の木があることを
引っ越してきて六年目の春にはじめて知った




2012.04.25 07:10

daily poet 20120424

雨上がりの朝

雨上がりの朝
地面がしっとり濡れていて
なぜかこのところオレンジの花ばかり植えてしまう庭は
花たちが瑞々しく晴れた空の方へ向いていて
若葉をつけてあっという間に鬱蒼とした木々は
緑のカーテンのように揺れている
この匂いは知っている匂いと
注意深く鼻を動かして
初夏の匂いがするんだと気がついた




2012.04.24 06:46

daily poet 20120423

アンテナ

アンテナはどこまで伸ばしてもアンテナだから
雲をつきぬけて星に届いても
受信したものをどう受け取るかは
地上にいるわたしが決める
だから心配なんてやめて
呑気に鼻歌でもうたって
今日も待ってる



2012.04.23 08:09